454話◇渾然たる統一


例えば、飛行機には三つの理想がある。

それは、

「より高く、より速く、より遠く」。



では、我々人間の理想とは何だろう。

飛行機と違って、人間は機械ではない。従って機械を説明するような「論理や理屈」での説明には馴染まない。


人間を、「情欲の奴隷」としてではなく、「道義の主体」として捉えたものを「人格」と呼ぶ。

人格とは、「知・情・意」の渾然たる統一である。


「渾然たる統一」なのだから、知・情・意のどれか一つか二つが伸びればそれでよしというものではない。

つまり、「知・情・意の円満な発達」こそが眼目となり、そこに人格的人間としての価値がある。


東洋思想においては三達徳「知・仁・勇」とも呼ばれる。

知・仁・勇の円満な発達こそ、君子たるべき条件である。


芸道においては、人間を「心・技・体」の渾然たる統一と見る。

心・技・体の円満な発達こそ、芸道を極めていくための眼目である。



それぞれの要素の渾然たる統一や円満な発達とは、陰陽が相待ち相交わり、そこに生ずる矛盾や対立を克服して進歩発展へと化していく「中庸(創造と調和)」「造化の道理」そのものである。



志を高く掲げ、その実現に向けて歩む者ほど、道理に深く根ざすことが大切である。

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