酒◇理想の男

飲み会。

映画の話で盛り上がっていた。


「「カサブランカ」のリック(ハンフリー・ボガード)はカッコいい。あの映画に出てくる男は、皆「やせ我慢」のきくいい男だ」


「やせ我慢だけが、いい男の条件ってわけじゃないだろ」


「じゃ、誰かいい男の条件を検討してみろよ。言い出しっぺのお前がやれ」



「よし分かった。まず、フィリップ・マーロウじゃないが、いい男には強さと優しさが大前提だろ」

「潤いや深み、つまり色気も必須だな。それに、洗練されていて優美さがなくちゃつまらない。余裕や広がりがある男だな」

「志や誇り、節度を持ってないと軟弱に見える。気高く生きてる男ってことかな」

「緊迫感があって、穏やかで静かな男もカッコいいだろ。ゴルゴ13みたいな奴」

「誇り高くてユーモアに溢れた男もカッコいい。チャップリンやロベルト・ベニーニのような男」「ライフ・イズ・ビューティフルだろ。あれは泣いた」


「それでいて、シュワちゃんや、ヴィン・ディーゼル、ジェイソン・ステイサムみたいなパワフルな身体はカッコいいな」「もっと細マッチョがいいんじゃねぇか。力だけで技がなきゃ面白くねぇ」



いつの間にか、知らない連中も集まって議論に加わってる。笑


「ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグや孫正義やユニクロみたいな金持ちの男」「女はその男の金に寄ってくるんじゃないか?」「いや、金を生み出す能力に寄ってくるんじゃないか?」


「こういう男を全部足して2で割ったような奴が理想ってことか」「何で2で割るんだよ 笑」「水割りだろ 」「ビールで割れ 笑」



…好き放題に言い合った後、

「要するに、俺たちが飲んでる酒の中の酒のような男、つまり、これぞ誰からも文句の出ないザ・酒!みたいな奴こそ、男の中の男だな」

「確かに…、すごい酒は人を寄せるし、美味いし、皆元気になるし、パワフルだし、魂があるし、安くねぇし、油断して近付くと記憶が吹っ飛ぶくらいやられるし…」



「そんな男いるかよ?」

「俺にとってはマッカラン18年だな」「俺はワイルドターキー12年」「響12年」「クラウンロイヤル」「カシスオレンジ」「俺はボジョレー・ヌーボーみたいな女がいい」「理想の男って話だろ?笑」「俺はカフェオレ」「もやは酒じゃねぇし 笑」



愛すべき仲間たち。知らねぇ男女も混ざってるし。笑



それにしても、誰もが自分より格上の存在だと感じている酒を持っているみたいだ。



大笑いしながら、各々「店一番の好い男」を改めて注文し、敬意を払って乾杯、飲み干してきた。


じゃ、また。