カテゴリ: 東洋思想

東洋思想◇東洋思想は、雑多な処世訓や語録ではない!


私たちが生涯を意義あるものにするのに、大事を成し遂げようとするのに、ただ闇雲に過ごすのでは後悔が残る。


天地人の「三才」で言われる、天とは理想・目標であり、地とは現実・今・達成であり、そして人とは実現・計画・実践・努力である。

生活を目標(理想)→実現(計画・実践・努力)→現実(達成)→理想→実現→現実…の連続した実践、つまり、生涯どのようなところに向かって、どのように工夫し、力を尽くしていくかという方針を立てるべきである。


そのために「東洋思想」は役に立つのか?


「有意義である」と思っているのだが、東洋思想を学んでいると言う人に接してみると、雑多でまとまりのない処世訓や語録を沢山知っているばかりで、思想や哲学の締まりのなさや、志や行動の小ささにがっかりすることが多い。



東洋思想は、様々な処世訓や語録をかき集めたものなどでは決してない。

「人間としての自覚を明らかにして、その寿命を養い、志義を大きく強く持ち、大きく強く豊かに楽しく…つまり、強烈に生きる力を会得するための思考体系であり方法論」である。


私たちはこれを踏まえて、今年も活学として東洋思想を学んで行きたいと思います。

🔵東洋思想◇孫子の兵法14E. メモ


孫子の兵法は、戦争の法則性と、戦い方(負けないため、勝つため)の戦略や戦術を追求し、以て「戦いとは何か」を研究したもの。


「兵は詭道なり」とは、単に欺(あざむ)くというのではなく、正攻法奇襲入り混じっての千変万化を臨機応変に応対して、短期で相手を屈服させること。


「欺く」とは、実際と違う様に見せかけて相手に実態を悟らせぬようにして判断を誤らせることや、相手の裏をかき意表をつくこと、相手のペースを撹乱してこちらのペースに巻き込む等、あらゆる奇策が含まれる。

そうして敵の隙を作りだし、その隙を攻めることが「詭道」。


現状に対し、「詭」によって条件を変化させていく臨機応変の策を説く。

だから、「兵家の勝つは、先づ 伝ふ可からず」(言葉にできない)ということになる。


しかし、法則性はある。

それを学び、時・場所・状況・人に応じて千変万化させ、敵に勝ち、以って目的を達する。

より深い仁義のために、勝利という功利を追求することが必須なのだ。


「戦争相手」を、己の心・クライアント・克服すべきこと・障害・勉強や仕事の目標等に置き換えても読める。

🔵東洋思想◇孫子の兵法13 メモ


「用間篇」

用間の「間」とは間者(スパイ)。つまり、情報活動。


戦争には莫大な費用と、膨大な人数の兵士が必要。戦いが長引けば、その費用も人の数も甚大。たとえ戦争に勝ったとしても、その損失は国家を傾ける。

そして最後の勝敗は1日にして決まる。


この戦争の遂行に際して、事前調査は怠れない。情報収集においても敵に先んじること。

神や経験や数字に頼るのではなく、人を使って生きた情報を集め、分析する。


「而(しか)るに爵禄百金愛(おし)みて敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり」(
金銭を惜しみ敵情を視察分析しない者は不仁の至り)


間者の種類は五種類。

間者を敵に知られないように使いこなすことは、君主たる者の「宝」とすべき奥義。


五種類
1.
郷間敵国の住民をとり込んで情報収集
2.
内間敵国の役人をとり込んで情報収集
3.
反間敵の間者をとり込んで、こちらの間者とする(二重スパイ)
4.
死間敵国に潜入してニセ情報を流す
5.
生間敵国から情報収集して報告する

人選は重要。
「間より親しきはなく、賞は間より厚きはなく、事は間より密なるはなし」(最も信頼のおける人物に、最も高い報酬を与え、最も秘密にしておかなければないない)


「聖智にあらざれば間を用うること能わず。仁義にあらざれば間を使う事能わず。微妙にあらざれば間の実を得ること能わず」(人格者であり知恵のある者でなければ間者は使いこなせない。人を慈しむ心を持つ者でないと間者は使いこなせない。

きめ細かく、どんな些細な事柄も情報網から漏らしてしまっては、実際の功績は得られない)

もし、その間者が情報を外に漏らしたならば、間者もその情報を聞いた者も殺さなければならない。


間者を使った具体的な方法

いざ、戦いが始まろうとする時、まずは、敵の指揮官や側近・門番・従者などの名前を入手し、間者を送り込んで、彼らの動静を探らせる。

もし、敵の患者が潜入している事がわかったら、これを手厚くもてなして買収し味方にとり込み、「反間」として、敵国に潜入させる。


この「反間」には、敵国の者をとり込む役目を荷ってもらう。
敵の領民をとり込んで「郷間」とし、敵の役人をとり込んで「内間」とする。
そうする事で、敵の動静を知る事ができる。

それから「死間」を送り込んで、ニセの情報を流し、「生間」を送り込んで、更なる情報を入手。


最も重要なのは「反間」。
だから「反間」には最も良い待遇を与える。


「昔、殷の興(お)こるや、伊撃(いし)、夏に在り。周の興こるや、呂牙(りょが)、殷に在り。故にただ明君賢将のみよく上智を以って間となす者にして、必ず大功をなす」
(昔、夏の伊尹(いいん)をとり込んで、夏を倒して殷は起こった。そして、今度は殷の呂尚(りょしょう)ととり込んで、殷を倒して周は起こった。このようにすぐれた君主はすぐれた間者を用いて成功を収めている)


「これ兵の要(かなめ)にして、三軍の恃(たの)もて動く所なり」(情報戦線こそ戦のかなめであり、全軍はこれによって動くのだ)

この最終章「用間篇」が、孫子の中で、最も重要。


情報には当然嘘も含まれる。情報の活かし方は本当に難しく、従って「事前情報は不要」という考えもある。

しかし、戦いは競技ではない。両者共通のルールがあるわけではない。敵を知り己を知らなければ、意表を突かれ、裏をかかれかねない。


戦争は、自国滅亡の危機ともなり、従って絶対に負けてはいけないのだ。君主の国民に対する最も深い仁義は、自国を守り平和と繁栄を築き上げていくことだ。その「仁義」は、「戦争に負けない。戦争に勝つ」という「功利」によって貫徹される。

だから、戦いにおいては、「仁義」よりも「功利」なのだ。


より深い仁義のために、勝利という功利を追求することは必須となる。

🔵東洋思想◇孫子の兵法12 メモ


「火攻篇」

「孫子曰く、およそ火攻に五あり」(火攻めの種類は五種類ある)何を焼くか。


1.人員に損害を与える

2.蓄えた兵糧・物資を焼く

3.輸送物資を焼く(補給を絶つ)

4.倉庫を焼く

5.陣形を混乱させる


発火装置などの準備と時期が重要。

その時期は、月が「箕(き・みぼし)」「壁(へき・まめぼし)」「翼(よく・たすきぼし)」「軫(しん・みつうちぼし)」(いずれも星座の名前)にかかる空気の乾燥した時期。
これらの星座が月にかかる時は、統計学上、風が吹き起こる。


「箕」「壁」「翼」「軫」は、古代中国で、天体の位置や動きを知るために考え出された「二十八宿」という天体観測方法に用いられる星座の中の4宿。

まず、天を東西南北の四つの方向の分け、東は蒼龍、西は白虎、南は朱雀、北は玄武の四神(四つの聖獣がそれぞれの方角を守っている)をあてはめ、それぞれの方角をさらに七分割して二十八宿。
それぞれの方角にある星座を使って方向を見る。


そして、それぞれの場面に対する臨機応変な攻撃の仕方へと移る。

「およそ火攻は、五火の変に因りてこれに応ず」(火攻めの時の攻撃法に関して「五種類の場面がある)


1.敵陣に火の手があがった時

外側から素早く攻撃して追い討ちをかける。

2.火の手があがっても敵陣が静まりかえっている時

そのまま待機して様子を観察し、攻め時を見極め、チャンスが無ければ攻め込まない。

3.敵陣の外側から火を放つ事が可能な時

間者(スパイ)の放つ火の手を待つ事なく、外側から火を放つ。

4.風上に火の手があがった時

風下から攻撃してはならない。

5.昼間の風は夜にやむのでその点に注意。

以上の条件に応じて火攻めを活用する。


水攻めについて
「火を以って攻を佐(たす)くる者は明なり。水を持って攻を佐する者は強なり」(
水攻めは火攻めと同じくらい有効である)


ただし、水攻めの場合は、あくまで敵の補給路を断つ事に専念すべきで、すでに蓄えてある物資に損害を与えることはできない。


指導者の感情的行動の戒め

戦争には目的がある。

「戦勝攻取してその功を修めざるは凶なり」(たとえ戦争に勝っても、その目的を達成できなければ、負けたのと同じである)


根本の目的を見失うことはない。だから、慎重になる。

「利にあらざれは動かず、得にあらざれば用いず、危にあらざれば戦わず」(有利な状況でなければ動かず、必勝の作戦しか用いず、よほどの事が無い限り戦わない)
「怒りを以って師を興すべからず。憤(いきどお)りを以って戦いを致すべからず。利に合して動き、利に合せずして止む」(怒りにまかせて軍事行動を起こしてはいけない。有利だと思えば行動し、不利だと見れば撤退する)


「怒りは以って複(ま)た喜ぶべく、憤りは以って複た悦(よろこ)ぶべきも、亡国は以って複た存すべからず、死者は以って複た生くべからず」(怒りやいきどおりは、時が経てばいつか喜びに変わるけれど、亡くした国や死んだ人は、もう戻っては来ないのだ)

🔵東洋思想◇孫子の兵法11 メモ


「九地篇」

敵味方の置かれている9種類の状況と、それに応じた戦い方。特に捨て身によって全力を発揮する「奥の手」について。


「孫子曰く、兵を用いる法に、散地有り、軽地有り」

・散地自国の領内にある戦場となる場所。
ここでの戦いは避ける。味方の志を一つにして団結を強める。
・軽地敵地の入り口付近。ここに長居は無用連携を密接にして素早く進攻する。
・争地そこを獲得すれば有利な場所。敵が先に獲得していれば攻撃してはダメ 敵の背後に回って撃つ。
・交地敵味方の両方が進攻しやすい場所。部隊を孤立させないよう連絡を密に取る。 慎重に守りを固める。
・衢地(くち)数ヶ国と隣接し、そこ押さえれば周囲にも睨みを効かせる事のできる場所。実際の戦闘より外交交渉を重視。 同盟関係を結ぶこと。
・重地敵の真っ只中。必要なものは現地調達を心がける。 食料補給が絶えないように。
・圯地(ひち)道が険しく行軍が難しい場所。速やかに通過する。 自由な行動ができるところに出ること。
・囲地(いち)道が狭く、撤退するには迂回しなければならない不便な場所 自ら退路を断って、決死の覚悟で奇抜な作戦を用いる。
・死地(しち)速やかに戦わなければ生き残れない場所。速やかに戦う 戦う以外活路はないことを示す。


切り崩し作戦を重視。

相手の先鋒と主力部隊を切り離し、上司と部下を切り離し、一丸となって戦えないようにしむける。

しかし、敵が万全の準備をして整然とやってきた時は、
「先んずその愛する所を奪わば、則(すなわち)聴かん」(機先を制して敵の急所を押さえる)


何よりも速戦。隙に乗じ、思いもかけぬ道を通り、敵の意表に出ること。
「人の及ばざるに」(気づかれないうちに)
「虞(はか)らざる道に」(思いもよらない道を)
「戒(いまし)めざる所を」(思いもよらぬ方法で)攻撃する。


敵地での戦い方(重地)

必要な物は現地調達。それも、充分なくらい余裕を持って調達。

敵の領内の奥深くに進攻した場合は、兵は一致団結して、普段の力以上のものを発揮するために、兵にはたっぷりと休養をとり、充分に食事をして鋭気を養い、戦力を温存。


敵地の真っ只中であるが故に、勝たねば退路が無い事を悟らせて、窮地に追い込む。

充分に休養をとった後に窮地に追い込まれた兵士たちは、「拘束しなくても団結し、要求しなくても全力を尽くす」。絶体絶命の窮地に立てば、かえって恐怖は消えるもの。


「上手な戦とは、「卒然(そつぜん)」のようなものだ」。卒然とは、蛇の事。
その頭を撃てば尾で反撃をし、尾を撃てば頭で反撃して、胴を撃てば首尾ともに襲い掛かってくる。


この蛇のように軍を動かす事ができるか?


「呉人(ごひと)と越人(えつひと)と相悪(にく)むも、その舟を同じくして済(わた)り風に遇うに当たりては、その相救うや左右の手のごとし」(呉と越、敵同士の二つの国の人であっても、同じ舟に乗って嵐に遭遇して、舟が危ないとなれば、お互いが協力して左右の手のように動くはずだ)


これは、単に陣地を同じにしたり、一緒に戦うといった意味ではなく、敵味方一丸となってという事。このように、敵国同士を協力させるためには、政治の力が必要。
強者と弱者を協力させるには、地の利が必要だと説く。

思想や政治、地の利をうまく利用すれば、全軍を、あたかも一人の人間のように扱う事ができる。


「兵士に全力を出させるためには死地に追い込んで戦わせる」

「末端の兵に任務の説明をする時は、有利な事だけ教えて、不利な事は内緒にしておく」「命を賭けさせるためには、法外な恩賞も必要だし、無謀な命令を下す事も必要」


「地形篇」では、
「卒を視(み)ること嬰児(えいじ)の如し。卒を視ること愛子の如し」(赤ちゃんのように、わが子のように愛さなければ、兵士は将と生死をともにしようとは思わない)
と言いながら、ここでは、「わざと退路を断てば、誰もが死ぬ気で戦う」と説く。

敵に対しては、「囲む時は逃げ道を作っておいて窮地に追い込むような事はするな(軍争篇)」と、敵を必死にさせないための方法を説いているから、必死にさせるためにはその反対で、「退路を断って窮地に追い込む」


敵地での作戦の集大成。

敵地で戦う時は、まず関所を封鎖し、敵の連絡網を断ち、すみやかに軍儀して、敵が最も重視している部分を見極め、決定したら行動を開始。

最初は、わざと敵の思うツボにはまったように見せかけて、隠密裏に、静に、そして、チャンスと見てとれば、先ほど見極めた敵の一点に兵力を集中して、先制攻撃をかける。


「始めは処女のごとくにして、敵人、戸を開き、後には脱兎(だっと)のごとくして、敵、臥(ふせ)ぐに及ばず」(始めは処女のように振舞って敵を油断させ、その後逃げるウサギのようにすばやく激しい攻撃を仕掛ければ、敵は防げない)

↑このページのトップヘ