434話◇「守破離」の再考


造化の性質(自彊息まず・陰陽相対原理)がはたらきとなって万物を生成化育してきたのだから、それを根源として「守破離」を造化の道理とパラレルに考え、その理解を深めることができる。



⚫︎「守」形を通して「技の道理」に行き着く迄の段階。

例えば、書道で言えば楷書にあたる。姿勢、呼吸、筆の基本的な使い方を始め、トメ、ハネ、ハライなどの文字の道理をしっかり守って修業する段階。


⚫︎「破」守という決まった形を体現する段階を超えて、「技の道理」に順った形へと変わり、そこから「造化の道理」に行き着く迄の段階。「守」よりも形の自由度が増す。

書道で言えば行書にあたる。文字を書く道理に順っていれば、文字の形はその道理から導き出される範囲で楷書の形を破り、自由に変わってくる段階。


⚫︎「離」「造化の道理」「技の道理」から、その人の個性を通じた形にしている段階。

書道で言えば草書にあたる。書の道理から、その根源の「造化の道理」にまで至り、その道理に順って表現される段階。この段階では「守破」の形を離れ、書く人の個性が存分に加味される。

書道で「離」に至れば、書道に留まらず、そこから離れて様々な道においても、根本の「造化の道理」を踏まえた本筋が見極められるようになる。


もちろん、他の分野はまたその分野の道理と技術がある。

謙虚に技術も道理も学ばなくてはならない。



ただ、それぞれの道(書道・茶道・弓道・剣道等)において、「守」の段階で修めるべき形や、「破」の段階で会得すべき「それぞれの道の道理」は異なっていても、「離」の段階に至ると、どの分野でも同じ(造化の道理)になる。


だから、どの分野でも(大工・医師・武道家・陶芸家・ヤクザ・研究者・事業家)、一流同士は同じような境地を持っている。

その境地から、それぞれの道に参じ、それぞれの個性を通じて、より高みへと歩み続けている。

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