560話◇夕陽とミカン


人の哀しみを知ると、「元気を出せよ」とは簡単に言えない時もある。

そんな時は、昭和の青春ドラマじゃないけれど、夕陽を一緒に見るといい。


夕陽に向かって「バカヤロ〜!!」とは叫ばなくてもいいけれど、人を励ましたり慰めたり勇気付けたりするには、やっぱり夕陽。

理屈抜きに美しく、涙が出るくらい感動する。


夕陽には、苦しみや悲しみを大きく温かく包み溶かし、ゆっくり忘れさせてくれる力がある。



そんな夕陽を連想させるものが、ミカン。


夕陽のあの大きさと優しさと強さとあたたかさは、自然の素朴なミカンそのものじゃないか。


辛くなったら夕陽。そして、それを思い出せるミカン。

酸味の中の優しい甘み。それも人生の味だよ。

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