🔵東洋思想◇孫子の兵法1 メモ
孫子は、13篇からなる兵法書。
1.始計篇…兵は詭道なり、臨機応変、見通し
2.作戦篇…「拙速を尊ぶ」、現地調達
3.謀攻篇…戦わずに屈服させる。敵を知り…
4.軍形篇…不敗の準備。攻撃の機を捉える
5.兵勢篇…軍律、勢い、態勢
6.虚実篇…虚実で振り回し主導権を握る。
7.軍争篇…迂直の計、風林火山、NG集
8.九変篇…双方の利害を考えるバランス感覚
9.行軍篇…兆しを捉える。信頼関係の構築
10.地形篇…地形/敵/味方をよく見て、自ら状況を作り出す。
11.九地篇…活用し協力。敵は分断させる。→天地人すべて活用協力。呉越同舟。そして、敵は分断させて総攻撃をかける。
12.火攻篇…感情ではなく目的達成に徹する
13.用間篇…スパイ。情報を集めるネットワーク構築
以上の13篇。
「1.始計篇」
始計とは、はかりごとの始まり、つまり戦争に向かう心得や事前の準備。
そもそも、戦争は軽々しく始めるべきではない。平和か戦争の二者択一なら平和を選ぶ。
「兵は国の大事にして、死生の地、存亡の道なり。察せざるべからず」(戦争は国家の一大事で、国民の生死、国家の存亡にかかってくる。だから細心の注意を払って検討を重ねなければならない)
戦争は重大だからこそ事前に充分に戦争の法則性を研究すべき。
戦争を始めるか判断するための条件。
5つの基本事項で戦力を検討し、7つの条件を当てはめて優劣を判断する。
「故に、これを経(はか)るに五事を以ってし、これを校(くら)ぶるに、計を以ってして、その情を索(そと)む。一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法」(道・天・地・将・法の五つの事に関して、それが整っているかどうかで判断をする)
「道」は原則、方針。大義名分。
君主と国民の意思を一致させること。これがないと挙国一致の態勢、将兵を奮起させることが難しい。
「天」は情勢、タイミング。
天候・季節・時期などの時間的条件。
今がその(戦争する)時なのか?
「地」は環境的条件。
地の利、距離・険しさ・広さ・高さなど地理的条件。
地域や地形を考え、どの場所で事を起こすか?
「将」は大将の器量。仁義礼智信厳勇。君主は信頼に値する人物か。法令を守って賞罰などを公平に行っているか?
「法」は組織、規律、装備。軍制。軍の編成、職責分担、軍需物資の管理、適材適所への配置など。軍としての規律・団結力はどうか?これがないと、烏合の衆に終わる。
これら5項目について相手と自国を比べ、更に7つの条件を当てはめて5項目の条件が満たされているか判断し、戦争の見通しをつける。
1.君主はどちらが立派な政治(政治理念)を行っているか
2.将はどちらが有能か
3.天の時・地の利はどちらに有利か
4.法令はどちらがよく守られているか
5.軍隊はどちらが強いか
6.兵はどちらが訓練されているか
7.賞罰はどちらが厳正に行われているか
この基本の条件については事前判断であり、実際には「勢」を把握して7条件を補強する。「勢」とは、時々の状況を判断して臨機応変に対処すること。この臨機応変の判断には実践経験が必須。
原則(経)は書から学べるが、臨機応変という応用(権)は、経験を積まなければ身につかない。
そして、始計篇・準備段階で心得ておくことは「兵は詭道なり」。
「兵」とは戦争のこと。「詭道」の「詭」は、偽り騙す。臨機応変、千変万化して相手を撹乱する事。
そして、短期で相手を屈服させること。
「兵は詭道なり。故に能なるも不能を示し、用なるも不用を示し、近くともこれに遠きを示し、遠くともこれに近きを示し、利にしてこれを誘い、乱にしてこれを取り、実にしてこれを備え、強にしてこれを避け、怒にしてこれを撓(みだ)し、卑にしてこれを驕(おご)らせ、佚(いつ)にしてこれを労し、親にしてこれを離す。その無備を攻め、その不意に出ず」
(戦いとは敵をあざむく道。できるのにできないふりをし、必要でも不要と見せかける。遠ざかると見せかけて近づき、近づくと見せかけて遠ざかる。有利だと思わせて誘い出し、混乱させて突き崩す。充実している敵には退いて備えを固め、強敵とは戦いを避ける。挑発し掻き乱しといて消耗させ、低姿勢に出て油断を誘う。休養をとっている者は事を構えて奔命(忙しく活動させる)に疲れさせ、団結している敵には分断を謀る。手薄・無防備なところにつけこみ、意表をつく」
これらが戦術の要諦。
その運用は状況に応じる。
敵に勝つためには、正攻法だけではダメで、敵を欺かなければならない。
「欺く」とは、実際と違う様に見せかけて相手に実態を悟らせぬようにして判断を誤らせるとか、相手の裏をかき意表をつくとか、相手のペースを乱してこちらのペースに巻き込む等、あらゆる奇策が全部含まれる。
そのようなさまざまな工夫をして敵の弱点を作りだし、その弱点をつくことが「詭道」。
現実におかれた敵味方の実態に対して、「詭」によって条件を作り替える「権(臨機応変の対応策)」を説く。
ただ、浅はかなことや、やましい事を通すために騙し続けるのではなく、守るべきものを守るため、勝ち抜くために騙す。
そういう状況の千変万化があるから、「兵家の勝つは、先づ 伝ふ可からず」(言葉にできない)ということになる。
勝利の見通しが立つのは、勝つための条件が整っているからである。見通しが立たないのは条件が整っていないということ。
つまり、勝敗は戦う前に明らかになる。
従って、勝利の見通しも無しに戦争を始めてはいけない。
見通しは、経験値がモノを言う。