2017年05月

酒◇理想の男

飲み会。

映画の話で盛り上がっていた。


「「カサブランカ」のリック(ハンフリー・ボガード)はカッコいい。あの映画に出てくる男は、皆「やせ我慢」のきくいい男だ」


「やせ我慢だけが、いい男の条件ってわけじゃないだろ」


「じゃ、誰かいい男の条件を検討してみろよ。言い出しっぺのお前がやれ」



「よし分かった。まず、フィリップ・マーロウじゃないが、いい男には強さと優しさが大前提だろ」

「潤いや深み、つまり色気も必須だな。それに、洗練されていて優美さがなくちゃつまらない。余裕や広がりがある男だな」

「志や誇り、節度を持ってないと軟弱に見える。気高く生きてる男ってことかな」

「緊迫感があって、穏やかで静かな男もカッコいいだろ。ゴルゴ13みたいな奴」

「誇り高くてユーモアに溢れた男もカッコいい。チャップリンやロベルト・ベニーニのような男」「ライフ・イズ・ビューティフルだろ。あれは泣いた」


「それでいて、シュワちゃんや、ヴィン・ディーゼル、ジェイソン・ステイサムみたいなパワフルな身体はカッコいいな」「もっと細マッチョがいいんじゃねぇか。力だけで技がなきゃ面白くねぇ」



いつの間にか、知らない連中も集まって議論に加わってる。笑


「ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカーバーグや孫正義やユニクロみたいな金持ちの男」「女はその男の金に寄ってくるんじゃないか?」「いや、金を生み出す能力に寄ってくるんじゃないか?」


「こういう男を全部足して2で割ったような奴が理想ってことか」「何で2で割るんだよ 笑」「水割りだろ 」「ビールで割れ 笑」



…好き放題に言い合った後、

「要するに、俺たちが飲んでる酒の中の酒のような男、つまり、これぞ誰からも文句の出ないザ・酒!みたいな奴こそ、男の中の男だな」

「確かに…、すごい酒は人を寄せるし、美味いし、皆元気になるし、パワフルだし、魂があるし、安くねぇし、油断して近付くと記憶が吹っ飛ぶくらいやられるし…」



「そんな男いるかよ?」

「俺にとってはマッカラン18年だな」「俺はワイルドターキー12年」「響12年」「クラウンロイヤル」「カシスオレンジ」「俺はボジョレー・ヌーボーみたいな女がいい」「理想の男って話だろ?笑」「俺はカフェオレ」「もやは酒じゃねぇし 笑」



愛すべき仲間たち。知らねぇ男女も混ざってるし。笑



それにしても、誰もが自分より格上の存在だと感じている酒を持っているみたいだ。



大笑いしながら、各々「店一番の好い男」を改めて注文し、敬意を払って乾杯、飲み干してきた。


じゃ、また。


世人余話◇芸術鑑賞基準


芸術(藝術 げいじゅつ)とは、表現者あるいは表現物と、鑑賞者が相互に作用し合うことなどで、精神的・感覚的な変動を得ようとする活動。文芸(言語芸術)、美術(造形芸術)、音楽(音響芸術)、演劇・映画(総合芸術)などを指す。(Wikipediaより)



感性次第かもしれないが、私には芸術の鑑賞基準がある。


その基準とは、その作品に、


1.力強さはあるか

→これが一番大切。力強さの中に、表現者の信念や理想精神も宿る。

そして、力強さや尽きることのない溌剌としたエネルギーを内に秘めて、以下の要素が加わる。


2.優しさはあるか

→力強さだけでは、ガサツになる。


3.潤いや深みはあるか

→優しさに潤いや深み(慈悲)がなければ、分かりやすいけれど、浅く甘いだけ。


4.広がりはあるか

→潤いや深みが、余裕となって広がりを生む。


5.静謐さはあるか

→力強さや優しさ、深みや広がりがそれぞれ調和してくると、緊迫感を有しながらも、穏やかで静謐になる。


6.リズムはあるか

→静謐さの中に和やかさや柔らかさが生まれ、それはリズミカルなものになる。

そこに、表現者の風韻(風流余韻)や格調がリズム(音楽的なもの)として現れる。



そんな風に感じられる作品に触れると、心が震える。

心が高まったり、清浄になったり、楽しくなったりする。



道場にて、昇格審査時、技の採点基準にも応用したいと思う今日この頃。

うーむ。まだその段階ではないのか…。


人物かどうかの判断基準になるかも…。自分に当てはめると、目も当てられないが。笑

世人余話◇謙虚さと度胸と


人間は社会的動物である。社会を離れて生きていくことは難しい。

だから人は、他人から自分がどう見られているか、つまり、世間の評判を気にかけるものである。

「人に好かれたい、嫌われたくない」と。


しかし、世間や他人は自分のことを深く理解するものではない。むしろ誤解されるのが常である。

そして、難局に当たる人物や、複雑な人物ほど、世間から誤解され批判されるものである。


従って、志を持つ者、目標を持つ者、そして良心的な人ほど、周囲には謙虚であると同時に、周囲の評判や批判に惑わされない気迫と度胸が必要になる。


世間の評判に一喜一憂するような小さな人間では、何の期待もできない。


西郷隆盛は、「人を相手にせず、天を相手にせよ。天を相手にして己を尽くし、人を咎めず、我が誠の足らざるを尋ぬべし」


訳)人を相手にせず、常に天を相手にするように心がけよ。天を相手にして己の誠(真心)を尽くし、人を咎(とが)めるようなことはせず、ただ自分の誠の足らないことを反省せよ。

と言った。


彼にはこんなエピソードがある。(西郷南洲手抄 言志録講和より)

「明治6年、翁(西郷隆盛)は、陸軍大将兼参議に任ぜられた。

あるとき翁は陸軍大将の軍服を着て、若い士官をつれ坂を登っていた。そこに一人の車夫が汗を流して荷車を曳(ひ)いていた。

翁は手に唾(つばき)をして、「どれ、おいどんが押してやろう」と言って車の後押しをされた。

すると若い士官たちが「陸軍大将の軍服を着て車の後押しは人に笑われますよ」と注意した。

翁は振り返って「馬鹿どんが、そんな頭だからお前たちはつまらんたい。人を相手にせず、天を相手にせよ」と云われた。



人の評判や世間の誤解を相手にするのではなく、謙虚さと度胸を武器に自分の志や目標を相手にしたい。


相手に不足はないはずだ。

武器にも不足はないはずだ。


今日も健康と健闘を。

世人余話◇原色


原色とは、混合することであらゆる種類の色を生み出せる、互いに独立な色の組み合わせのこと。互いに独立な色とは、たとえば原色が三つの場合、二つを混ぜても残る三つ目の色を作ることができないという意味である。(Wikipediaより)



色の三原色は、

シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)。


光の三原色は、

赤(R)、緑(G)、青(B)。


たった3種類の原色から、様々な色が作り出される。



陰陽(2つ)や五行(5つ)の組み合わせ、これだけあれば何でもできる。


それを思えば、成長・変化・展開していくには、いつだって1人より2人の方がいい。



ふたりの想いが一つなら、そこにエネルギーは集中する。

様々な物事が生み出されるだろう。



世の中には、74億の原色(人)が存在する。


和して協力できるならば、不可能など存在するのだろうか。

酒◇その酒に相応しい男か


先日、バーのカウンターで、たまたま隣に座った男が話してくれた。



…私もこの酒が大好きなんです。大好きというより、育てて貰ったと言うところでしょうか。

20代の時、上司に連れて行かれた店で初めてこの酒の18年ものを飲ませてもらいました。こんなに美味い酒があるのかと感じたと同時に、私はこの酒にまだまだ相応しくないと思いました。器量が全く追いついていないのです。

以来、この酒を飲む度に、自分の器量の小ささを反省し、この酒に相応しい男になるんだと、頑張ってきたつもりです。

対等に飲めると感じたのは、40歳を過ぎてからです。

そして先日、妻がこの酒の25年ものを贈ってくれました。私の誕生日だったのです。酒以上に嬉しかったのは、「あなたは、もうこのお酒も及ばないくらい素敵な男ですよ」という妻からの言葉でした…。



素敵な話だなと思った。

このエピソードの前半だけ、私も同じ経験がある。

世の中にこんなに美味い酒があるのかと感じ、いつかこの酒を飲むに相応しい男になると決意し、自分より若い有望な男に飲ませてやりたいと思った。


酒には、その作り手の魂が込められている。


「お前はその酒を飲むのに相応しい男か?」と聞かれれば、悔しいが返事に少し迷うこともある。



いつの日か、今度は私が、誰かに酒のエピソードを話す夜が来るだろうか。



男は、1本の酒に育てられる。

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