518話◇グレープフルーツ


「会場の雰囲気に呑まれてしまって

「緊張してしまって

変な言い訳している男たちがメディアに映っていると、昔を思い出してちょっと同情してしまう。



昔々、

臆病や怠惰を隠す言い訳ばかりして、自分と師を騙し、同情を引き出させるように仕向け、臆病や怠惰を養ってしまっていた時期があった。


言い訳の天才になってしまった私は、とうとう師に呼び出された。

手にグレープフルーツを持った師を見て、馬鹿な私は「グレープフルーツ大好きなんです!」と、甘ちゃんな声を上げていた。


師は「そうかそうか」とニコニコしながら、私の頭上でそのグレープフルーツを握りつぶした。


私の頭上から滴り落ちてくるグレープフルーツ


「舐めてみろ。何の味だ?」

グレープフルーツです」


「おい!」

はい」


「プレッシャーに際し、お前から出てくるくだらない言葉や情けない態度、あれは一体何なんだ?」

すみません」


「本当の自分は違うのか?」


「プレッシャーをかけて出てくるものは何だ?」


「お前が出せるものは、お前の中にあるものだけだ」



信念があれば、

笑顔があれば、

感謝があれば、


それを出せる!


大好きなグレープフルーツのように!

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