452話◇足りないもの


どうもパッとしない!上手くいかない!

うーむ

「そうだ、あの人に聞いてみよう!」

「一生懸命やってますが、上手くいきません。私に足りないことは何か教えて下さい!」

「あの人」に対して、謙虚も礼儀もわきまえている私の完璧な態度。これで答えを貰えば一攫千金間違いなし。


しかし、「あの人」はニコニコしながら思いもよらぬ質問をしてきた

「あなたに足りないことを伝える前に、聞きたいことがあるんだよ」

「何ですか?」


「上手くいかなかった事実から、あなたが学んだことは何?」


言葉に詰まる馬鹿な私。

「学んだことは山ほどあるだろ?それを見せろと言ってんだよ。まさかお前のその謙虚さも礼儀も、俺からタダで答えを引き出そうとする偽りの態度じゃねぇよな?」


考える時間を与えない特殊な業界での交渉術のような「あの人」の話の流れに、ただ思考停止してしまい、真正面から睨まれて心が折れてしまう軟弱な私。


「そんな心、その程度の努力から育まれる知性や創造力で望む結果が欲しいだと?お前の頭の中はいつまでお祭騒ぎしてんだよ。そんなんでのし上がっていける道理がどこにあるんだ。

お前がどんな道理に根ざして道を歩いてるのか、ここで説明してみろ」。


何も言えない私。


おい、俺の時間を無駄にしに来たのか?それは俺を馬鹿にしに来たつまり、ケンカしに来たということだな」。


え?私は「あの人」にケンカ売りに来たんだっけ?何が何だか分からない私

何故か、指の一本でも置いて来なければ済まないような雰囲気になってしまった。


これ以上私を虐めても面白くないとようやく(?)悟った「あの人」は、

「お前なりに頑張ってるのは認めるが、世の中そうは甘くねぇよな。お前は真面目だが、少し勤勉さと反省が足りねぇんだよ。だから押しの強さが出てこない。

いいか、お前がやってるのは、風で書類が吹っ飛んでいる時、いつまでも風に舞った書類を集めようと駆け回っているようなものだ。

まずすべきは、窓を閉めること。それから書類を丁寧に集めることだろ。

何度も言うぞ。いいか、お前は物事の肝腎なところを疎かにしてあるから、押しの強さが出てこない。本末転倒して必死に頑張っている姿は、見ていて笑えるだけだぜ」。


痛々しくて笑い者の私。


「ま、これで美味いものでも食ってこい。ついでに、詰まらねぇ自分も喰ってしまえ。自分の砂糖のような甘さをしっかり反省しろよ。いつまでの世間を相手にして負け犬やピエロを演じてるんじゃ面白くねぇだろ。

次来る時は、俺を儲けさせる面白い悪巧みでも持ってこい」。

「じゃ、俺は約束があるんで。また」。



帰り際、玄関の壁にこんな額が掛かっていた。

「真面目な人達を喰いものにするな。浅はかな者達に利用されるな」。


台風の影響か、今日は天気まで大荒れだよ。

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